第三回レビュー「ユリ熊嵐」


こんにちは。

書こう書こうと思ってはいたんですがもう前の記事から1ヶ月以上も経ってました。
前回のランキングがちょっと重くて、、疲れちゃいましたね。
ではレビュー、行きたいと思います。


今回紹介したいのは、


です。

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では、まずあらすじから。

あるとき、宇宙に浮かぶ小惑星クマリア」が爆発し、その破片が隕石となって地球に降り注いだ。するとこれに呼応するように地球上の全てのクマが突然凶暴化し人間を襲うようになる。かくして人間とクマの長い戦いが始まり、いつしかお互いへの憎しみから両者を隔てる「断絶の壁」が築かれた。

そんなある日。人間側にある「嵐が丘学園」に百合城銀子百合ヶ咲るるという2人の転校生がやってきた。だがこの2人、その正体は「断絶の壁」を越え、人間に化けた「人食クマ」だったのだ。

(ja.m.wikipedia.org/wiki/ユリ熊嵐より)

とあります。

「クマリア」が爆発してクマが凶暴化して「断絶の壁」が出来て人がクマに化けてどうのこうの・・・






はい。わかんないですよね。
どんなストーリーなのか、想像できた方は少ないと思います。

これは割とこの作品というか、この監督の特徴(?)です。

少女革命ウテナ」や、「輪るピングドラム」なんかで知られている幾原邦彦監督の作品なんですが、
この人の作品、とにかく比喩・暗示表現が多いです。

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そして物語の序盤は本当に謎だらけ。ぶっちゃけ、頭の中は???です。

この「ユリ熊嵐」も例に漏れずそういうアニメで、あらすじに登場した「クマリア」だとか、「クマ」だとかはそんなに真剣に考えなくてもいいです。


重要なのは、この作品を通じてのテーマ。


この作品のテーマは、「好き」。

なんか好きとかこうやって書くとこっぱずかしいんですが、この作品のテーマは、「好き」です。

簡単に言うと、この「断絶の壁」という隔たりがある、「ヒト」と「クマ」の「好き」の物語なんですね。

ラブストーリーとは、また違います。なぜかっていうとこの作品にはほとんど女の子のキャラクターしか出てきませんから。(タイトルにある通り“ユリ”要素は若干ありますが)

「ヒト」と「クマ」の登場人物から紹介していきます。

まず、「クマ」なのはこの2人。

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クマの姿になるとこんな感じになります。

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で、「ヒト」は彼女。

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「ヒト」の女の子は、過去に母親を「クマ」に食べられてしまっていて、さらに物語中にも「クマ」に関する事件に巻き込まれてしまいます。
そのことから「クマ」をとても恨んでいます。
家で熊の置物にライフルぶっ放しながら「私はクマを許さない」とかつぶやいてるわけですから、相当ですよね。


で、「クマ」の2人はこの「ヒト」の女の子に何やら特別な思い(?)があるらしく、「クマ」の世界から人に化けて「断絶の壁」を越えてやってきたわけです。

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まあこんな顔して見てますから、食べようとしてるとしか思えないですね。「デリシャスメル」とか言ってますし。



で、ここからが本題。

「クマ」と「ヒト」は物語の中でもちろん重要なんですが、本質的に言いたいことは、両者が「壁に阻まれた」、「異なる」存在であることです。

その「壁」が物語中の「断絶の壁」なわけですね。

そして、さっきも書いたように両者の「好き」の物語ですから、この「異なる」存在がお互いを「好き」になってしまうっていう物語展開なわけです。

「ヒト」だとか「クマ」だとか暗示されてはいますがこういう立場的に「異なる」存在の「好き」の話って、まあ割と王道ですよね。


ですが、幾原監督はこれだけでは終わりません。

もう1つ、重要なテーマを入れ込んでるんですね。

それは現代社会が抱える、

「みんなと同じじゃなきゃダメ」

という感情。

実際、僕たちの社会でも「みんなと同じ」でないと疎まれるような雰囲気はあると思います。

そして、「ヒト」と「クマ」は異なる存在。その両者が「好き」になるわけですから、それはもちろん「みんなと同じ」ではないわけです。

それは「みんなと同じじゃなきゃダメ」というテーマを持つこの作品でも当然疎まれます。むしろ、消去しなければならないということになるんです。

この作品の中の学校では、

「排除の儀」

というものが存在します。

生徒が集まって、学校の中で最も空気の読めない生徒を決める会議なようなものです。(物語中で詳しい説明があるわけではないので私見)
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その中で、主人公の「ヒト」の女の子は
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こうなっちゃうわけです。

選ばれると「透明な嵐」に巻き込まれてしまい消えてしまう、という設定なんですが、そこも多分「イジメ」の暗示なんだと思います。



そんな設定を持つ世界の中で、「ヒト」と「クマ」は「好き」を貫けるのか。そういった話です。



重い話が続きましたが、この作品自体はめちゃめちゃファンシーな世界観をもっています。


OPはこんな感じ。

僕も男なんでわかんないですが、なんか本当に女の子がかわいい、って言いそうな絵柄、キャラクターですよね。

この監督、男の人なんで凄いなあって思っていたんですが、

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髪をピンクに染めてるあたり、なんとなく理解できました。


ですが、これだけのファンシーな世界観の中にこれだけ重い、現代社会が抱えているようなテーマを入れ込んでいる手腕は本当に凄いと思います。

この監督の作品はほとんどがそういう作りになっていて、「輪るピングドラム」なんかだともっと重い、深いテーマです。

最後に、この作品を観るにあたってのアドバイス。

最初は本当に頭の中が???だと思います。
レビューではネタバレになるので紹介できませんでしたが、登場人物たちにはそれぞれ語られていない過去があり、物語の中でもたくさんの伏線がでてきます。
それが物語の中盤あたり(5話あたり)から徐々に明らかになってきて、本当に面白くなってきます。

ぜひ、観てみてほしい作品です。


こんな感じで、第三回レビューは終わりたいと思います。
稚拙な文章でしたが、最後までご覧になって頂き、ありがとうございました。